2021年

2021.12.20配信

「長い影」 

 12月半ばを過ぎて、冬至が近づいてきました。昼間の時間が短くなり、昼間でも影が伸びてきましたね。我が家の近くの神戸における正午ごろの太陽の高さ(南中高度)は、夏至は78.8°、冬至は31.9°です。太陽の高さは夏至の頃の半分以下で、北側にある我が家のベランダは建物の日影に入り、正午ごろでも全く光が当たらなくなっています。

自分の影の長さは「身長×日影倍率」で計算できます。夏至の日影倍率は0.22、冬至の日影倍率は1.7です。私の身長をほぼ1.7m(本当は1.68m)とすると、夏至の影は「1.7m×0.22でおよそ37㎝」、冬至は「1.7m×1.7でおよそ2.9m」になります。冬至の頃は有難いことに影だけ見ると身長も高いし足も長い。スタイル抜群のイケメンに見えますね。

 ただ、影が伸びるということは道路も建物の影に入り、日差しによる暖かさを感じる機会が少なくなります。日差しのぬくもりを感じる春が待ち遠しいですね。

「斜陽にて 車道に伸びる シャドウかな」

2021.11.19配信

「サザンカ」 

 立冬の前後ぐらいから我が家の周辺ではサザンカを見かけるようになります。サザンカを見ると童謡の「たき火」をついつい口ずさんでしまいます。「さざんか さざんか 咲いた道・・・♪」この童謡の歌詞をよく見ると、サザンカが咲く時期の気象を上手に表現しています。例えば「木枯らし 木枯らし 寒い道」や「北風ぴいぷう 吹いている」など。

サザンカが咲く時期は、秋から冬に季節が変わる時期です。発達した低気圧が日本海を東へ進むと寒冷前線が西日本や東日本を通過し、激しい雨や雷が発生することもあります。寒冷前線の通過後には木枯らしが吹き、その後は冬型の気圧配置に変わり、冷たい北風が吹いて急激に寒くなることもあります。

サザンカが咲く時期は、天気の急変や気温の低下に注意が必要です。濡れて風邪をひくことが無いようにご注意ください。サザンカ自体も花びらを散らして、寒さに震えているような気がします。

「サザンカも 天気急変 散々か」

2021.10.20配信

「柿届く」 

 今年も岡山に住むいとこから柿が届きました。太秋柿(たいしゅうがき)というシャキシャキとした歯ごたえの良い大きな柿です。今年は大きな台風の影響もなく、丸々と太って出来は良いようです。

毎年届けてもらっている柿ですが、私はこの柿で秋の深まりを感じさせてもらっています。オレンジよりもやや濃い柿色、柿の香り、ツルツルした手触り、柿の甘さという、視覚・嗅覚・触覚・味覚で晩秋がやってきたことを感じられるのです。

今年の西日本は10月中頃まで日中の最高気温が30度前後の日が続き、10月前半は記録的な暑さとなり、遅くまで夏が続いていました。しかし、柿が届いた1016日頃から寒気が流れ込んで、9月並みの気温が11月並みの気温まで下がりました。季節が一気に進み、行き交う人々の装いも変わりました。柿が届く時期には秋らしくなるものです。夏はしばらくサヨウナラです。

「柿届く 季節が進み 夏季終了」

2021.9.17配信

「ハギの花」 

  ハギ、ススキ、キキョウ、ナデシコ、フジバカマ、オミナエシ、クズ。夏の終わりに、秋の七草を紹介することがよくあります。覚えているつもりですが、春の七草と混同し、ハギ、ススキ、ゴギョウ、ハコベラ、ホトケノザ・・・、途中から間違えることがよくあります。なかなか身に付かないものです。

 先日、ハギの花をテレビで紹介するために、ハギが咲いている近くの公園に行ってきました。薄紫色のハギが咲いていると思い写真を撮ると、花の形は小さな蝶々のようでほぼ同じですが、どうも全体の形が違います。ハギは樹木(低木)なのに対して、草なのです。調べてみると「アレチノヌスビトハギ」でした。漢字で書くと「荒地の盗人萩」。以前は見たことが無かったのですが、近年に日本に入ってきた繁殖力旺盛な帰化植物とのことです。

危ない危ない、もう少しで違う花を紹介するところでした。知識はしっかり持っていた方が良いですね。

「花紹介 違うと信頼 はぎ取られ」

2021.8.20配信

「8月の大雨」 

 今年の8月は広い範囲で大雨になりました。普段の8月であれば、晴れて厳しい暑さに見舞われ、渇水を気にする時期ですが、今年は西日本や東海・北陸を中心に雨が降り続きました。それもほぼ半月で平年の8月一カ月分の4倍程度も雨が降り、長崎・佐賀・熊本・広島などでは8月の降水量が統計開始以来最も多くなりました。それも130年以上の観測の中で1番です。

災害が発生した現場でのインタビューでは「今まで経験をしたことが無い大雨でした」という言葉をよく聞きますが、最近は観測データからしても「初めて見る値」が多く、気象情報を解説している私にとっても「経験をしたことが無い現象の解説」をすることが多くなっています。

 「今まで大丈夫だったから今日も絶対大丈夫」という考えは変えた方が良さそうです。少しでも心配な状況になれば、安全な場所に早く身を移す行動をとりましょう。

五・七・五を作りました「経験が 役に立たない 大雨よ」

2021.7.20配信

「ツバメの巣立ち」 

 隔年の前期だけ、毎週一回京都の大学(京都府立大学)に非常勤講師として通っています。商店街を通り大学に向かうのですが、この商店街のアーケードには無数のツバメの巣があり、ツバメの様子を見ながら大学に向かっています。

今年も4月中頃から巣作り(リフォーム)が始まり、梅雨の頃は親鳥が雨の日でもせっせと子ツバメに餌を運んでいるのを見かけました。巣の中で行儀よく座って親鳥を待っている子ツバメもかわいらしいですね(まさに座ろうズ)。7月になるとあっという間に巣立ちです。71週目までは巣の中で鳴いていたのに、2週目には巣は空っぽになっていました。

子供の巣立ちは早いですね。私の娘も大学生ですが、多くの知識を吸収して社会に飛び出してもらいたいと願っています。親として講師として大事なことを伝えているつもりですが、伝わっているのかいないのか?悩むことばかりです。

「子の巣立ち 親には酸っぱい スダチのよう」

2021.6.18配信

「線状降水帯の発生」 

 617日から「顕著な大雨に関する情報」が気象庁から発表されることになりました。この情報は「線状降水帯の発生」を告げるもので、それも地盤がかなり緩んでいる段階や河川がかなり増水している状態で発表されます。

線状降水帯は発達した雨雲が連なって、局地的に激しい雨を数時間にわたって降らせます。2020年熊本の球磨川が溢れたときなど、過去も線状降水帯によって大きな被害が発生しています

気象キャスターは、大雨の時はスタジオの中に張り付いていることが多く、刻々と変わる気象レーダーを初見で解説をすることがほとんどです。雨雲が線状に連なっていても「線状降水帯」と言って良いのかどうか、迷いながら伝えていました。気象庁が「線状降水帯発生」を発表することにより、はっきりと危険な状態であることをお伝えすることができるようになりました。

「線状降水帯発生」は危険な現象です。今のうちにどのような行動をとるべきか考えておきましょう。

2021.5.20配信

「早い梅雨入り」 

 梅雨入りが早すぎます。511日に九州南部、515日に九州北部と中国・四国、516日には近畿と東海が入ったと見られますと発表がありました。平年よりも3週間ぐらい早く、1951年から統計開始以来、「最も早い」もしくは「2番目に早い」梅雨入りです。本格的な雨の季節が5月半ばでやってきました。

梅雨入りが早くなりましたので、「梅雨明けも早くなる?」と何人かに聞かれましたが、調べてみる限り、ほとんど関係が無さそうです。

では「梅雨の期間は長くなる?短くなる?」を調べると、梅雨入りが早いと梅雨の期間が長くなる傾向があります。平年だと40日前後ですが、50日前後になることが多く、今年はぐずついた天気が長きそうです。

雨が続くと地盤が緩み、河川の増水した状態が続き、災害が発生しやすくなります。雨に対する心構えがまだ出来ていないかも知れませんが、今年は早めにスイッチを入れましょう。

「バラに雨 梅雨入りするとは つゆしらず」

2021.4.20配信

「初夏の天気」 

 今年は季節の進みが早いですね。桜はあっという間に通り過ぎ、入学式の頃には葉桜になっていましたね。

今年は何といっても3月の気温が高すぎました。平年よりも3度前後高く、47都道府県の主要な気象台のうち46地点が統計開始以来最も気温が高い3月となりました(沖縄気象台だけが2位)。多くの気象台が100年以上も観測を続けているので、100年に一度あるか無いかの高温となったわけです。

我が家の周りでは、例年だと大型連休の頃に咲く花が4月半ばで咲きました。ボタンにイチョウ、ハナミズキ、ツツジ、バラも咲きました。ただ、このまま暖かい日が続くと植物の生長には良いのですが、晩春から初夏にかけては必ず冷え込んで霜が降りることがあり、上空に寒気が流れ込むとヒョウが降ることもあります。寒暖の差が大きく、植物にとっては厄介の季節です。植物の生長が早いだけに、被害が無いことを願います。

「バラが咲く 初夏の天気は とげがある」

2021.3.19配信

「最早の桜」 

 今年の桜(ソメイヨシノ)の開花は早いですね。一番早かったのは広島で311日に開花しました。平年よりも16日も早く統計開始以来最も早い開花になりました。その他の多くの所(福岡、京都、名古屋、東京など)も統計開始以来最早となっており、統計は1953年から取り始めている所がほとんどなので、69年間で一番早かったことになります。つまり、生まれて初めてこんなに早く桜の開花に出会ったことになりますね。

 早かった原因は、今年の気温の経過が、桜が早く咲くリズムに合っていたためです。1月は冷え込んだため休眠打破がうまく行われ、2月は観測史上最も暖かくなった所が多かったので生長が順調に進み、3月も気温の高い状態が続いていることにより早く咲いたと考えられます。

 卒業式に桜が咲き、入学式には葉桜となっていることでしょう。最近は出会いの季節の花ではなく、別れの季節の花になってしまったようです。

 では一句、「暖かい 春に桜が 錯乱し」

2021.2.19配信

「梅の花」 

2月は立春が過ぎ暦の上では春が始まっていますが、春はまだ浅く「余寒」や「春寒」などの言葉が表す通り、春と冬が同居している季節です。しかし、春は冬の尻に敷かれているものの少しずつ春を見つけることができる時期でもあり、我が家の周りでは梅の花がチラホラと咲き始めます。伸びた枝に小さく付いている紅や白の花を見ると、寒さを耐えるしかなかった季節が動き始めた感じがします。京都では「春は梅の花から山吹の花」までと言うことがあり、梅の花が咲いたということは春が始まったとも言えるでしょう。

昼間の時間も少しずつ長くなり、日差しでも春を感じることができる時期です。暖かい日が続くと梅の花が3分咲から5分咲となり、やわらかい風に乗って梅の香りが遠くまで届くようになります。

桜のような派手さはありませんが、春の香りも楽しませてくれる梅には、季節の変わり目を知らせてくれる役割もあるのです。

 

「梅花咲く 春の喜び 倍かもね」

2021.1.20配信

「久しぶりの氷点下」 

  ベランダに置いてあった観葉植物(カランコエ)が、厳しい寒さでぐったりしてしまいました。軒下なら大丈夫だと思っていたのですが、順調に育っていただけに私もうなだれております。我が家の周辺(兵庫県西宮市)では3年ぶりの冬日(最低気温が0℃未満)となり、金魚藻を入れていたベランダのバケツも厚い氷が張り、金魚藻が氷に閉じ込められ、芸術作品のようです。近くの川も結氷し、久しぶりに冬の寒さを思い出しました。

日本海側は短期間に雪が降り積もり、車の立往生、着雪による倒木や停電も発生し、当事者の方にとっては大変な冬になっていると思います。

冬の寒さの底は大寒(120日)から立春(23日)の頃です。この時期を乗り越えると日差しに暖かさが加わり、春も近づいてきます。間もなくやってくる春に思いを寄せ、体調を崩さぬようコロナ禍の冬を乗り切りましょう。

カランコエが一句「氷点下 植物放置 やめてんか」

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